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実写映画『心が叫びたがってるんだ。』感想(※ネタバレ有り)

試写会にはことごとく外れ、初日は健気に社畜をし、翌日の朝は普通に寝坊したので(健人くんごめん)、公開2日目の本日夜、ようやっと中島健人主演映画・実写版『心が叫びたがってるんだ。』を観に行くことが出来ました。以下、感想というか鑑賞したてホヤホヤの新鮮で雑駁な所感です。

突然ですが私は青春映画、とりわけ学校モノが嫌いです。何故なら自分の高校時代に青春のSの字もなかったから。だからあらゆる青春モノは避けて生きてきたし、今後もそうするつもりです。僻みでしょうか、ええ僻みです。例外的に『ピンポン』はお気に入りなんですが、あれは窪塚洋介が出てるから好きなのです。そしてそう、今回も俳優目当てです。私の魂の推し・中島健人くんが主演を張っているからという単純で強烈な動力だけで観に行きました。青春モノに加えて実写映画も嫌いな私がわざわざ劇場に足を運ぶ理由はこれしかありません。まぁ同じ理由でこないだ勝利くん主演の『ハルチカ』もワクワクしながら観に行ったし、人の「嫌い」というエネルギーなんて「好き」に比べればなんてちっぽけで脆弱なエンジンなんだろう、と自分のことなのに他人事のように関心してしまいます。「好き」は偉大だ。

さて自分の話ばかりになってしまったので、気を取り直して以外感想を書き連ねます。思いっきりネタバレしてるので、未見の方はお気をつけ下さい。
私の作品に対するスペックは、原作はノベル・アニメ共に未見、そして中島健人くんのファンです。

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この映画は、幼い頃に自分のおしゃべりが原因で両親が離婚し、それ以来言いたいことを話そうとするとお腹が痛くなる呪い(と本人は信じ込んでいる)をかけられた少女・成瀬順が、クラスメイトの坂上拓実と仁藤菜月、田崎大樹と出会い、ミュージカルの企画を通して成長していく青春群像劇です。
”言葉”に重きを置いた作品で、「最高の失恋はあなたをきっと強くする」というやや焦点がズレたキャッチコピーが付けられているがゆえに恋愛要素が先走っている感が否めないのですが、言葉が人にもたらす影響の強さを問うた作品ともいえるでしょう。主要4名はそれぞれ自分の発した言葉がもたらしたことによる何かしらの過去のトラウマを抱えて生きています。

そんなお話の中で私が一番”言葉”の重要性を感じた点は、順と拓実が廃ホテルの中で向き合って話をするくだりです。

拓実「成瀬のおかげでみんなミュージカル楽しいって」
順「私のせいでじゃなくて、おかげで?」
拓実「うん」
順「おかげで…」

と話していたシーン。「せいで」と「おかげ」って辿り着く結果が同じでも、過程を真反対にしてしまう重大な言葉だと思っていて、言葉の表裏一体性を如実に表していると感じます。この作品はどちらかというと「(言葉を)言う/言わない」の二元論にフィーチャーされてるからここは多分そんなに需要なセリフでもないんだろうけど、私はここにグッと来た。
あと、健人くんが映画雑誌でよく「普段の中島健人のオーラを消すのが大変だった。拓実は地味な役だから力を抜きまくった。でもふれ交の王子様役のシーンは中島健人が出てるね」みたいな話をよくしてたけど、なるほど王子様の衣装はしっくりすぎるほどしっくりきていた。でも私が一番”中島健人”を感じたのは、先述した廃ホテルのシーンで「思ってることを全部言ってくれ」と順にお願いし、承諾した順から心無い言葉を次々と掛けられる場面で、立膝をついてひたすらに優しい目でそれらの言葉を受け止める拓実だった。私はいわゆるセク鬱をリアルタイムで経験してないし、三人時代に健人くんが浴びせられた心無い言葉の数々も全ては知らないけど、どんな言葉のナイフも黙って受け止め、花束で返す拓実の姿は普段の健人くんとオーバーラップするところがたくさんあって、このシーンだけバカみたいにボロボロ泣けてきた。私はあのシーンが何よりも素直に中島健人そのものだったと思う。

あと健人くんのオタクとしてはピアノのシーンがたまらなかったです!ピアノを弾けない役者だと宿命的にカットが手だけとか顔だけとかバラバラになるけど、健人くんはピアノが弾けるから全体を引きで撮れて映像にハクがついて良い。あとは風呂上がりにあぐら掻いてオレンジジュースを飲む場面などオタク垂涎の姿も多々あり、結論的に大満足の映画でした。

 

あとやっぱりいまいち腑に落ちないのが「最高の失恋はあなたをきっと強くする」ってコピーだなぁ。順は確かに拓実への失恋がきっかけで言葉を取り戻せたけど、ここの本質は「言葉を話せないのは呪いのせいなんかじゃない」って自分でちゃんと気付けたことだと思うんですよね。まぁトリガーは失恋だったかもしれないけど。

あと芳根京子さんの演技は初見だったんですが、儚いながらも圧倒的な存在感と演技力に終始背筋がゾクゾクしました。「微笑み」という表情の種類だけでも500種類くらいあって、本当に自然と目で追ってしまった。よい女優さんを知れました。

次回観たら新しく見える部分も多々あると思うので、随時加筆修正していくつもりですが、とりあえず初見の感想はこんな感じです。