愛はジャスト

Sexy Thank You to the World

Sexy Zoneデビュー5周年ベストアルバム発売記念イベントに行ってきた話

世の中の人間を運の良い人間と悪い人間の二種類に大別するなら即座に後者に分類され、1/2の確率で当たるものに4/5で外れ続け、東に良席巡るオタクがあれば涙を呑んでおめでとうと言ってやり、西に落選の通知あるオタクがあれば「私もだよ」と肩を抱いて励ましてやるような、宮沢賢治だって2秒で雨に負けてしまうレベルのひ弱な人生を激走している私なのですが、なんとこの度Sexy Zone5周年記念イベントに当選いたしました。ビックリでしょ。私といえばかの松潤やキムタクから「悩みを聞いてほしいからこのアドレスをクリックしてくれ」という怪しいアドレス付きの文字化けメールを送りつけられるほどには徳の高いオタクなので、「おっ、ついにセクゾもこのレベルまで来たか。優秀優秀。」と心得顔でいつものようにメールを削除しようとしたところ、「アルバム…?デビュー…?当選…?ハッ!!」と雷に撃たれたようにこのイベントのことを思い出し、あまりの嬉しさにゴム毬のようにその場を跳ね回ったのでした。きっと私はこの幸運と引き換えに今後の人生で遭遇する全ての信号に引っ掛かるんでしょうけど、その代償の甲斐ある素晴らしいイベントでした。あれからもう2週間も経つなんてにわかに信じられないし、そもそもあと1ヵ月で今年度が終わるという現実を受け入れられないでいる時をかけれない成人女性なのですが、こうしている間にも着実に脳細胞は死滅しているので、絞りカスみたいな記憶が辛うじて残っているうちに感想をしたためておきます。メモは取らない派なのでニュアンスでfeel itしていただければありがたいです。

 

まずはじめに基本情報として、私が当選したのは2/19(大阪)の2部でした。基本的に10分前行動という人間らしい概念を備えていない野生児なので、意気揚揚と集合時刻丁度に来たらほぼ最後尾という有様で、自分のガッツの足りなさに平手を打ちつつも大人しく開場を待ちました。会場は大阪のはずれにあるコミケで有名な土地で、数年前に右も左も分からぬまま二次オタの友達に連れて来られたあの日のことを思い出しながら、また別種のオタクとしてこの地に舞い戻って来ることになるとは…と自分の運命の数奇さに唸りました。スタッフさんに言われるがままに海沿いの道に整列し、西日を受けてきらきらと輝く水面と波のさざめきをBGMに開場を待つという大変穏やかな時間を過ごした後、途中から体育館みたいな場所に押し込められて大変しんどかったです。長時間に及ぶ整列により足腰が限界を迎えていたせいで完全に挙動が老人だったので、最終関門である本人確認をパス出来るかどうかとても不安だったんですがなんとか通してもらえて良かったです。お姉さんから【2-C】と書かれた紙を手渡され、「あぁ、そういえば4ブロックに分けられてるんだったな」と事前の情報収集で得た知識を参照しつつ案内されるがままに会場に入ると、なんと手前の方のブロックではありませんか。通常私の人生ではめったに起こり得ない、1/2で当たるものにちゃんと当たってしまったのです。「これは一生分の運どころか二生分の運を使い果たしてしまったのでは…?」と、来世の自分にセクシーソーリーしながら神社の鳥居をくぐるかのような厳かな気持ちでCブロックの入口を抜けました。

メインホールではセクゾちゃんの歴代PVが延々と流れ続けていました。周りは当然の如くファンばかりなので、盛り上がるポイントからフリから奇声を発するポイントまでみんな同じで大規模オフ会みたいで楽しかったです。昔→今の順で流れていたPVが開演時刻のタイミングでカラフルEyesになり、「もしかしてこれはこのまま登場するパターンか!?」と誰しもがステージを凝視し固唾を飲んで見守ったのですが結局出てこずで、「ちゃうんかーい」という関西人らしい軽妙なツッコミが隣のお嬢さんから入ったところで会場が暗転。そしてそこへ響く、私にとって心音のように親しみ深く聴き慣れすぎたあのシンセサイザー………。

そう、Hey!!Summer Honeyがはじまったのです。

会場の真後ろからブロックの間を疾走してステージまでやって来るケンティーの姿を見て、諸々の苦労や疲れが全部ふっとんだ。このブログを読んでくれている方は既にご存知の通り、私といえばケンティーのソロコンに行けなかったトップオタならぬトップ亡霊じゃないですか?まぁこれから先の長いオタク人生、こういう苦い思い出の一つや二つを抱えて生きるのも人生を豊かにする良いスパイスになるわね☆(CV:平野レミ)と、無理やり自分で自分を納得させていたのですが、このイントロが流れた瞬間、そういう後悔や怨念めいた情念が一気に浄化された。さすがに一曲丸々の披露ではなかったけど、ステージに一人で立ち、とびきりの夏を背負ってサマハニを歌い踊るケンティーを見てとにかく胸がいっぱいになって泣きそうになった。正直に告白すると、今回のイベントの私のピークはここです(ごめん)。DVD再生3秒でタイタニックが沈んだかのようなクライマックス具合だった。

その後メンバーがどんどんステージに出てきて、会場は割れんばかりの歓声に包まれました。最初の挨拶で聡ちゃんが「私の心に~?」\お賽銭~!/というらじらーネタをぶっ込んで来た時、大ウケしてその場でくるっと回って子供みたいにきゃっきゃとはしゃいだケンティー、永遠に見てられたので心のvineに保存しました。つくづく中島健人という人はくるくると表情を変えて見る人の目を引き付けて離さない万華鏡みたいなアイドルだなぁと思った。勝利はいつも通り顔が小さすぎてどこに頭があるのか焦点を合わせるのに精一杯だったし、マリウスは肌の内側に蛍光灯が仕込んであるのかな?と訝るほどに真っ白に発光していてそのまま光に溶けて消えてしまいそうだった。聡ちゃんは青々とした透明感に満ちており、本人の自覚していない部分から匂い立つ無防備でどこか暴力的ですらある美しさに思わず戦慄しました。風磨くんは丸型のサングラスに白のタートルネック、黒のMA-1という一時期の窪塚洋介を彷彿とさせる風貌で、ひとりだけオーラの出方が尋常じゃなかった。突然卍 L○NEに弟子入りします!とか言い出しても有り金全部差し出して着いていけるレベルのカリスマ性を湛えてた。マリウスも風磨くんみたいなMA-1着てたけど、こっちは真夜中にこっそり王室を抜け出してダウンタウンのライブハウスにお忍びでやって来た若き皇子って感じの隠しがたい高貴さを纏っていて、同じ服でも異なる物語性を感じられて面白かった。

その後、今回のMCはケンティーだということが告げられ、ここでもまた1/5の確率で一番当たりたかったものに当たってしまったことを知りました。このイベントに当選したこと、ブロックの前方に入れたこと(しかもケンティーのいる下手側)、それだけでもう十分身に余る幸せを感じてたんですが、まさかのケンティー回に当たるとは感無量でした。12月26日の朝、無いことは分かっていながらも一縷の願いを込めて覗いたクリスマスソックスの中にまだ一つプレゼントが残っていたみたいな、そんな心地でした。

さて、これまでの部(東京1〜3部、大阪1部)は事前に取ったアンケートをもとに好きなシングル曲やカップリング曲の上位曲を歌ってたんですが、今回はラストということで今まで歌った曲から3曲(コングラ、STAGE、with you)+松島zone、松島eyes、松島summerに雪が降る、菊池くんの言いなりになんてならないの計7曲からくじ引き形式で歌う曲を選ぶことに。一際異彩を放つ後ろ4曲は本日の司会・ケンティーの職権濫用による選定らしく、勝利からは「健人くんの趣味じゃん」、マリウスからは「健人くんのパーティじゃん」とぐうの音も出ない的確なツッコミを受けておりました。当の彼は「違う!今日はセクゾのパーティだよ!」と必死に弁明しておりましたが、「保体の授業で使うだけだから!」とエロ本を隠し持ってることが親にバレた時の男子中学生並みに説得力が無かったです。ケンティーがくじ箱(命名:セクシーボックス)を抱えて曲目を解説している間、マリウスがずっとケンティーのマイクを持っててあげてたんだけどどうも重たかったようで、終始フリーフォール並みに上下していました。それでもあの小枝みたいな華奢な腕でずっとケンティーにマイクを向け続ける姿がいじらしすぎて、8億年ぶりに「萌え~」というキモオタ然とした感情が萌芽しました。そのマリウスの上下する手に合わせて律儀に顔の位置を微調整するケンティーがまたマリオネットみたいでかわいかったんですよ。最終的に「筋肉痛になる~!」と甘い悲鳴を上げていたマリですが最後までよく頑張りました♡

くじ引き一番手は勝利で「これメンバーの引いたらすごくな~い?」とキュヒキュヒしながら箱をガサゴソしてたんですが、本当にメンバーのを引き当てていて「やはり持ってる男は違うな…」と覇王の勝負強さに平伏しました。しかもそれがケンティーが一番聴きたかったであろう、"菊池くんの言いなりになんてならない"だったのでやっぱり王はすごい。

さて、曲中のどこかに自作のドS台詞を入れるという中島先生の性癖を盛り込んだ"菊池くんの言いなりになんてならない"を見事引き当てられてしまった風磨くんは最初「マジかよ」みたいな顔をしてましたが、ショーマストゴーオンの規則に則り否応なしに曲は始まります。序盤は通常通りのMake my dayが歌われました。そして台詞チャンスの間奏に差し掛かった時、ファンもメンバーも「ここで来るか!?」みたいな期待の眼差しをもって風磨くんを見つめていたのですが、その場をぐるぐる歩き回るだけで結局披露されず…。「あっ、これはもしかして風磨くんのご機嫌を損ねてしまったやつでは…!?」と場内に一筋の緊張が走りましたが、それを察知したのかちびーずが「ま~だ!まだだから!」と客席を嗜めていたのが出来る子でした。そして運命のラスト、もうここで台詞が来なければ性癖で人を轢き逃げした罪を償って何らかの罰を受けるしか事態の収拾が見込めないな…と変態の大家・中島先生の行く末を案じていたところ、風磨くんが厳かに口を開き、「…みんな欲しいの?」\ほしい~!!!/「下さいは?」\下さい~!!!/「風磨様下さいはぁ!?」\風磨様くだざいいい!!!/

「一生俺に着いてこい!(ニヤッ)」

と、額縁に入れて飾りたいくらい完璧なドS台詞を下賤の民に与えて下さったのでそれはそれは湧いた。火災報知器の如しけたたましさで湧いた。風磨くんが台詞を言ってる最中、隣にいたケンティは授業参観で発言する我が子を見るような庇護の愛に満ちた目で見てたし、最後の「着いてこい!」が決まった瞬間はなぜかセクガルに向けて「神よ…」のポーズしてて笑いました。

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今まで見たどんなキスアンドクライよりもスリリングだったし、あの時だけはホールが世界選手権のアイスリンクだったよね。ちなみに教え子(風磨)にベタ惚れの中島コーチの感想は「すごい…!鳥肌が立ちすぎて羽根が生えそう…!」だったのでだいぶちょろい。

"菊池くんの~"が無事に終わり、お次は風磨くんがくじを引く番に。「中島っていつもこういう気持ちなんだね」や「ちょっとハマりそう」などすっかりドSキャラがお気に召したようで、客が\ふうまく~ん/と呼ぶと「黙れ」と返すなど終始ノリノリでした。ケンティーもケンティーで(o'ω'o)「風磨さま(ドS台詞)お願いします!」(o´ω`o)「あれ結構チャクラ使うんだよね~」(o'ω'o)「千鳥くらいね!」などと絶妙なオタク加減を露呈させながら子犬みたいにきゃっきゃと風磨くんに絡んでいっていました。そんなほっこりした掛け合いの中、風磨くんがくじを引き終え、中を確認した後「お前らこれ感謝しろよ!」と言ったのですが、そのすぐ後に「あ、ヤバい。いま素でお前って言っちゃった」と焦る姿に普段はそんなこと言わないんだもんねぇ♡と軽率にキュンとしました。そしてそんな彼が引き当てた曲はまさかの"松島summerに雪が降る"で、ヤラセなのかよ!?と運の無いほうの人生を送ってきた私は喜びつつもその引きの強さに嫉妬しました。聡ちゃんも先ほどの風磨くん同様「マジかよ」みたいな顔になってましたが、くじの決定は絶対なので1秒の猶予もなく曲はスタート。「聡だけを見てたロングタ~イム♪」など替え歌も絶好調な年上組を横目に、複雑な面持ちで踊り始める聡ちゃん。ところがサビに入った瞬間突如しゃかりきに踊り出し、「この緩急の付け方、まさにアイドル!」と関心していると、激しく踊り出しすぎたせいでポケットに入っていた指輪を全部ぶち撒けておられました。これは本人も想定外だったようで、曲中も必死に床を探していたのですが結局見つからず、曲のキモともいえる大切なメ↓リー↑クリスマス♪がぞんざいな仕上がりになってしまい、風磨くんにケツキックを入れられてました。この一連の流れがどこのカートゥーンネットワークだよってくらいコミックとして完璧で、聡ちゃんのこの降って湧いてくるアイドル性って一体何なんでしょうね?と隣にいた人に大真面目な顔で話しかけそうになった。最後の台詞は聡ちゃんが一人五役してそれぞれの個性にあったセリフを言うという趣旨だったんですが、「僕の飼い主になって下さい」「俺の女になれ」「僕にハマりうす♡」「俺とキスしよう」「ん~っ(キス顔)♡」という具合で、ぶちまけ事故の痛手を感じさせないナイス台詞選択だったことは聡ちゃんの名誉にかけて報告しておきます。

松島summerも無事終わり(終わり良ければ全て良しという使い勝手のいい言葉が日本にはある)、次は何だろう?とわくわく待ち構えているとケンティーが「本来なら2曲で終わるんだけど、今日はラストだし超盛り上がってるから3曲目行っちゃおう!」とまたもや有難い職権濫用を行使してくれて、大阪2部だけイレギュラーの3曲目を披露することに。くじの引き手の聡ちゃんが「みんな何聴きたい?」と問いかけてくれたので、\ステージ!/と客席が答えると「えっ、ケンティー?」と聞き返され、「(おいマジで言うてるんか…?)」と会場がカイジ並みにざわ…ざわ…したのですが、「あぁステージかぁ、でも好きな人がいると全部その人の名前に聞こえない?」と、ケーキ食べると太るよね?くらい当然のような口ぶりで問い返されたので、つい「お、おう。」となってしまいました。そしてそれを聞いて満更でもなさそうなケンティーと「いいから早く引け!」と風磨くんにドヤされる聡ちゃんの図がまとめてムギュッとかわいかったです。そんな会場の誰よりもケンティーガール♡な聡ちゃんがくじを引き終えた後「これは…!」みたいな匂わせフェイスをしたので、STAGE来たか…!と会場が色めきたったのですが実際は"with you"というなんとも聡ちゃんらしいオチで、逆におあとが宜しかったです。なんとなく「おい〜↓」という暗い空気に包まれる中、「でも僕with you好きだよ♡」とさらりと(多分本人は何の気なしに)フォローしたマリウスから後光が差して見えたので、なるほどマリは天使でもあり仏陀でもあるのだな、と愛が宗教の壁を越えた瞬間を見た。

"with you"終了後は新曲"ROCK THA TOWN"のお披露目とティーザー映像の上映が始まりました。映像は一応会場限定みたいなので内容を詳述することは控えますが、一言でいうとハワイの街並みや陽気さに喰われないセクゾ自前の非日常感すごいということです。日本人がハワイに行くとどうしてもバカンス感や現実逃避感が締まりの悪い蛇口みたいにチョロチョロと漏れ出てしまうものですが、ところがどっこいセクゾがハワイにいてもなんの違和感もなし!!違和感どころか寧ろハワイが彼らの居る場所に寄っていっているかのようなフィッティング具合で、ちょっとした地殻変動を感じました。とにもかくにも完全版を見るのが楽しみで仕方ないです。ライブの時は風磨くん以外のメンバーが客席に降りてきました。私のブロックの横は勝利が通ったんですが、あまりに一瞬かつ隅々まで煌めきすぎていて何だかそういう流れ星みたいでした。この曲はAOKIのタイアップのおかげもありこれまでも何度かショートver.で聴いていたんですが、フルで聴くと完全に売れる予感しかしなくてひとりほくそ笑みました。あ~、3月29日(水)にポニーキャニオンから全三形態で発売されるSexy Zone13枚目のシングル"ROCK THA TOWN"とっても楽しみだな~!!

…と、全4曲に及ぶ大充実のミニライブが終わり、各々「みんなありがとう!」みたいな感じで手を振ってたんだけど勝利だけずっと裾に向かって手を振ってるのを私は目撃してしまいました。これは絶対「ちょ!ww勝利wwセクガルはこっちこっち!ww」みたいなツッコミ待ちだったと推測しているんですが、みんなそれぞれ手を振るのに夢中で誰も気付いてませんでした。そんな状況に居ても立ってもいられず、「おい!!勝利様がおボケあそばされてるだろ!!!ツッコんで差し上げろ!!!国が国なら不敬罪やぞ!!!」と私の中の勝利過激派右翼おじさんが怒号を飛ばしかけそうになるデンジャラスな局面もありましたが、警備員につまみ出されそのまま人権を失うこと待ったなしなのでグッとこらえました。こんなことが日常茶飯事で起こっているのかと考えると、グループ内唯一のツッコミ担当の苦労は計り知れません。

その後一人一人順番に挨拶をしていったのですが、みんなそれぞれ自分の言葉で真っ直ぐに思いを伝えてくれてただただ感涙でした。ケンティーは「最初は俺たちがドームに連れて行ってやる!って言ってたのに、最近はセクガルの方から"私たちがドームまで連れて行ってあげる!"って言われることが増えて感動してる。セクシーガールはこの5年で美しく成長したね。これからもSexy Zoneとセクシーガールは"with you"の関係で。」と、オチをしっかりつけて締めくくるという持ち前の頭の回転の速さが伺えるコメントでシンプルに好きでした(風磨くんの真似)。ケンティーの紡ぐ「美しい」や「愛してる」という余分な贅肉のない真っ直ぐな言葉はいつも直接心臓に届いて血液に溶け、養分として全身を巡っているような気がしてならないから、是非今度コンサート帰りの私を採血してみてほしい。多分Kから始まる新しい栄養素採取出来る。マリウスも「最近毎日どんどん楽しくなるから生きてて良かったなぁって思います。」と言ってくれて、私もだよ!と喉から這い出ようとする言葉と涙を抑え込むのに必死でした。こちらこそマリの大切なかけがえのない16歳を、柔らかで清潔な無菌の青春を、見ず知らずの人間に分け与えて一緒に過ごさせてくれてありがとう。

全員分の挨拶を終えた後、勝利が「今日はなんかみんなと距離が遠いな~って思ってたんだけど…」と話し出すと、\遠かったよぉ~!/とすぐに反応が返ってきたのですが、「まぁその場所は俺が降りてない方のブロックだから遠いのは当たり前だね!」みたいな恐怖のマジレスを至極サッパリとした笑顔で投下していて俄然将来が楽しみになりました。個人的に元祖マジレッサー中島裕翔の後継者にはぜひとも勝利を打診したいのですが、ジャニオタマジレスアカデミーの皆様いかがでしょうか?その後「お見送りのハイタッチがあります!」とお知らせが入ると、ケンティーがおもむろに手の平を客席に見せてエアハイタッチのようなものを始め、その後くるっと横を向いて何かの儀式のように仰々しくかつ丁寧な動きで自分の右の手の平にチュッと口付けその手を天に高く掲げていたのですが、その一連の動きがカードキャプターさくらセーラームーンの変身シーンのようで、あまりにも何もかもが完成されすぎていた。たとえ夢を見ずとも、もう少女に戻れなくとも掛かる魔法が世界にはあるんだなって唐突に気付かされて、心がジュワリと潤んでときめきが滴るような熱い痛みを覚えた。

最後はマリウスの「愛してるで~♡」という世界一あざとい(かわいい)関西弁と投げキッスで締め括られ、大盛況のうちにイベントは閉幕しました。その後ブロックごとに順番にハイタッチの行なわれる通路へと移動することになったのですが、なぜか全く緊張しませんでした。そもそもハイタッチがあることを知ったのが前日の夜というかなり急なタイミングだったので心の準備もクソも無かったし、こちとら元々「会える~♡」とかそういうメンタルではなく、拝顔の栄に浴するとか謦咳に喫するとかそういう下人の心持で参加していたので、ハイタッチとかいうオタク的難易度五つ星ランクのイベントを突然知らされても対岸の火事というか対岸の船上パーティー状態でいまいちピンと来ませんでした。彼らに手を触れた瞬間、太陽光を浴びたヴァンパイアのように雲散霧消して服だけ残っちゃったらどうしよう、下着新調してくれば良かった、など現実味のない乾いた心配をしながら歩みを進めて行くと、やがてアルコールを吹きかける係のお姉さん現れ、そこでやっと事の重大さに気付きました。ジェットコースターが落ちる寸前みたいな絶叫が前方から聞こえ、あぁこの角を曲がるのね、ちょっと明るくなったな、照明が眩しいな…なんて考えてるうちに終わってました。気が付いたら手の平を見つめて廊下の外で立ちすくんでた。私わりと物覚えがいい方だと自負してるんですが、この時の記憶はほぼほぼありません。今思えばあれは夢かもしくは久保帯人が生み出した残像だったのかもしれません。前の部のレポを必死に読み漁った結果、一言程度伝える時間があるとの情報を仕入れていたので、「ありがとう」くらいは言おう!と鼻息を荒くしてたんですが、そんな時間はありませんでした。ただケンティーにはどうしても何か伝えたくて絞り出すように「ァ…」みたいなカオナシボイスを出してみたら、何か言いたげなことは察してくれてタッチ中の手を小指から順番に折り畳んでくれたんですよ…………ピアノで例えるとドの鍵盤に親指を置いてソ→ファ→ミの順で鍵盤を弾くみたいな………………ァア………(カオナシ)……………目は一切合いませんでしたが…………。恐らくそれが海馬粉砕のトリガーとなり、後ろのメンバーの記憶どころか翌々日くらいの記憶まで無くなってしまっているのですが今日まで大きな怪我も逮捕状も無く生きているので多分大丈夫です。ひとつ鮮明に残っているのは、ハイタッチ中ずっと「ありがとー!!!」と誰よりも大きな声で言い続けていた聡ちゃんの晴れた日の洗濯物みたいなカラッとした声です。アイドルから元気を"もらう"って端的にこういうことをいうのかなと沁み入った。風磨くんはクッと上がった口角がとにかく優雅で繊細で綺麗だった。それでいて全てを包み込んで赦すような寛大さも持ち合わせていて、他人の口角にこんな清廉な感情を持つ日が来ようとは夢にも思いませんでした。勝利とマリウスの記憶は冗談抜きで1mmもありません。本当にバカ。ちなみにおぼろげに残っているケンティーの手の触感は、よく手入れされた古い洋館の高級擦りガラスみたいでした。冷たい気品が指先に湿潤に湛えられていた。

 

さて、私は常日頃からセクゾのことは天界から慈善活動にやって来た天使か、もしくはアリみたいにせこせこ働く愚民どもにヘリからドル札をばら撒きにやって来た陽気なギャングか何かだと思っているフシがあるので、こうやって凡庸な人間である私と触れ合ってしまうことで彼らに見ている何か大切なものが壊れてしまうのではないかと恐れていたんですが、実際触れてみて確かに何かが壊れてしまったような気がしました。どんなに夢を押し付けても希望を塗り重ねても、アイドルは私と同じ普通の生身の人間でした。だから彼らに過剰な期待を抱くのも、装飾に塗れた夢を見るのも、好き勝手考察して消費するのも、なんだかすごく最低で身勝手な行為なのかもしれない、と今更そんなことに呆然としながら会場限定CDの予約列に並んでいたのですが、私の後から出てくる女の子たちが次々と泣き崩れながら「生きてて良かった」と口々に話す様子を見て、些末な前言を撤回をしました。だって、やっぱり普通の人間は0.01秒の皮膚の接触だけで他人を泣かせることなんて出来ないです。たとえ私があと何万年生きたってきっと自分と手を合わせるだけで泣いてくれるような人には絶対に出会えません。現れません。私ばかりでなく、"普通の人間"にはそんなこと到底出来ない。”普通"という生皮を剥いで、他人の夢という重い鉛を背負って、刺すような明るい照明の下で全てを曝け出し、永遠のように儚く輝くアイドルという存在は誰よりも特別なただの人間だったんだと思い知らされた。アイドルとは神でも偶像でも虚像でもなく、ただの人間が生傷を作りながら見せてくれる夢のような現実なのだという至極当たり前のことをあの場で初めて文字通り"肌"で知ってしまったんだよね。それは私にとってとても幸福で重要な気付きでした。

だからこれからもずっとポップでキュートな夢を見続けさせて下さい。STY!!!*1

*1:Sexy Thank You!!!