愛はジャスト

Sexy Thank You to the World

「過去は燃やさない」~SEXY ZONE repainting Tour 2018所感~

自分が最後に入ったのが4/5の名古屋の2部だったから、最後に彼らを見てからもう既に1ヶ月以上が経っており、大枠から細部に至るまで様々なことが非情なまでの速さで記憶からこぼれ落ちている。あのペラペラの感熱紙に味気なく印字された座席番号を見返したところでその薄情な薄さよろしく記憶が痩せ細っているという事実を突き付けられるだけだし、今更取り立てて書くようなことも無い気がしてたけど、1か月以上経っても未だに覚えていることというのはつまり、あの日から起こった色んなこと(オタク事以外も含む)を濾過して残った2018年の春の思い出の全てだと思うので、いつか本当に何もかもを忘れてしまうその前に、あの時感じた感動に輪郭を与えておくべくあえてレポートの類の一切を見ずに己の記憶のみで液晶と差し向っている。これはそういう人間の書いた夜中の感想文です。


このツアーの事を思い出す時に今でも真っ先に目に浮かぶ光景は、アンコールのSexy Zone(曲)でバックステージからメインステージに向かって導火線が燃え進むようなスピードで花道を駆け抜けていく健人くんの横顔。健人くんっていくらダンスで客席に背を向けていたって、メンバーと見つめ合って歌っていたって、目が身体のそこら中に付いてるんじゃないかってくらい常に客席に視線を這わせて絶えずファンの存在を意識しているような人だけど、この曲でダッシュする時ばかりはひたすらに前しか見ていなかった。目指す先に見えるその場所は私にはただのメインステージにしか見えなかったけど、健人くんの瞳にはきっと何か特別で大きなものが映っているんだろうな、とそう第三者に感じさせるほど強く意志めいてクッキリとした横顔で、ああこの人に着いていけばきっと途轍もない未来に連れて行ってくれるに違いないと直感で分かった。思ったとか感じたとかじゃなくて分かった。言葉よりも雄弁で、誓いよりも絶対だった。疾走する健人くんの姿は眩しいくらいに健やかで、美しくて、そして圧倒的にエネルギッシュで、生命が身体という容れ物から迸ってあふれ出た時、こんなにも瑞々しく輝くものなのかとちょっと唖然としてしまった。清岡卓行の『ある眩暈』という詩の中にある、

それが美であると意識するまえのかすかな驚きが好きだ。風景だろうと音楽だろうとはたまた人間の素顔だろうと初めて接した敵が美であると意識するまえのひそかな戦きが好きだ。

という一節のことが初めて読んだ時からずっとずっと大好きなんだけど、私はこういう一瞬に出会うそのためだけにバカみたいな手間と時間とお金と若さと感情の全てを総動員してライブという空間に足を運び続けているんだと思う。よくオタクって「〇〇君がいるから生きていける」って冗談めかして言ったりするけど、あの時の健人くんからは誇張抜きで本当に物理的に命を貰ったような気がしたんだよ。風を切る髪先から揮発した命の蒸気が会場の空気にキラキラと弾けて溶けていく様が目に見えるようで、大きく息を吸い込むと、魂の欠片を共有しているような気分になった。


タイトルの「過去は燃やさない」という言葉はPower of Runの歌詞だけど、セトリに入っていないこの曲が何度も頭をリフレインするような、ある種の特殊な決意をひしひしと感じるツアーだった。彼らはしきりに"塗り替えるんじゃなくて、塗り足していく。過去を否定せずに塗り足していく"というようなことを語っていたけど、それが彼らの信じる道であるのならば周りが何と言おうとその正義を貫き続けてほしい。その判断が一般的に正しいか正しくないか、好ましいか好ましくないか、美しいか美しくないかなんていう他人の杓子定規に興味は無いから、あなた達の美しいと信じるものだけを見せ続けてほしい。根拠も担保も何も無い、裸の誓いを「絶対だ」と真っ直ぐな目をして言い切ってしまえる、その無垢で野蛮な青い強さに酔わせ続けて下さい。


改めて、ツアーの完走おめでとうございます。愛してるぜ、Sexy Zone!!!!!