2025年1月17日、中島健人さん388日ぶりのコンサートが有明アリーナで行われた。
衝撃の2024年1月8日を経て涙の3月31日を迎え、4月1日よりソロとしての活動が始まり、この先どんなことが待っているのだろうと期待と不安をちょうど半分ずつ抱えながら、日々健人くんの一挙手一投足を齧り付くように見つめていた。供給されるものはどれも期待を裏切ることはなかったが、私が最も欲していたもの、それはコンサートのお知らせだった。
しかし、春を越しても夏を迎えても、その発表が我々の元に届けられることはなかった。
別にアイドルの活動はコンサートが全てではない。4月1日以降もKTTは毎日更新されていたし、主演ドラマもあったし、シングルリリースもあった。雑誌にも載っていたし、音楽番組にも出演していた。普通にオタクをやる分には何ら不足のないどころか十分な露出だったと思う。
だが、私はコンサートを愛しているのであった。2016年に初めてSexyZoneのコンサートに行って以降、開催されたツアーには毎回足を運んでいた。年に1回会うか会わないかの謎の親戚よりもハイペースで姿を確認しており、客観的事実だけで言うと親戚以上の存在だった(?)。そんな親戚同然の存在とこんなにも長期間会えないなんて、寂しいとか悲しいとかいう感情よりも不安が勝った。どこでどう血が繋がってるから分からない得体の知れない子供の成長より8年間会い続けてきた健人くんが元気でいるのかをこの目で確かめることのほうが大事だった。グループを抜けてまず最初にやったことというか、無くなったことがコンサートだったから、もしかして健人くんはもうコンサートをやりたくないんだろうか…と不貞腐れかけていたのも事実だ。他の仕事で忙しくしているのは目に見えて分かっていたけど、"ファンと会う"という活動の優先順位が下がったように見えて辛かった。
んが!!!
そんな不安は1月17日を境に雲散霧消した。
中島健人1stソロライブN/biasへの参加によって…。
開演は金曜の18時。場所は有明アリーナという健人くんにとっても自分にとっても初めての会場だった。売店のポテトが美味しいという事前情報を仕入れていたため、意気揚々とポテトを買ってみたら思いのほか量が多く、久しぶりのケンティーに謁見するに備え精神統一するための貴重な待ち時間をポテトを無心で掻き込むという不敬の時間に充ててしまい猛省した。ポテトの名誉のために言っておくと味は美味しかった。
18時ちょうどに客電が落ち、15,000人分の期待と緊張が入り混じった異様な空気を割ったのは「愛が朽ち果てても相でありたい」という健人くんによるピカレスクの独唱だった。透き通るような銀髪に真っ白な衣装を着て1人でステージに登場した健人くんは313カラットのダイヤモンドくらい強烈に輝いていた。388日ぶりにステージに立つ健人くんを目にして、興奮や嬉しさより先に安堵の感情が来たことをよく覚えている。
そこからはもう完全にケンティーのターンで、事前に配信されていたコールアンドレスポンス動画の教えに従って「暴走!想像!構造!妄想!放送!闘争!」や「歯には歯を!」などと指定暴力団の仇討ち決起集会のようなコールを銃型のペンライトを振り乱しながら実践した。まさか令和の時代に遠い異国の地で「歯には歯を!」と15,000人に絶叫さるれなんてハンムラビ法典も想定外の出来事であっただろう。
ピカレスクの後はN/o'clockと続き、その後に短い挨拶があった。心臓に有刺鉄線が生えていると言っても過言ではない強心臓の健人くんが身体中の全てを絞りきったような声色で放った初日の「お待たせ」の言葉はきっとオタクをしている限り一生忘れないだろう。ファンも緊張していたけど、健人くんはもっと緊張していたし、怖かったんだと分かった。アイドルとファンって究極に色気のない表現をすると生産者と消費者でしかないけど、1人で15,000人を背負って大きなステージに立つ姿を見た瞬間、そういう関係性の垣根を踏み越えてこの人に何かしてあげたい・守ってあげたいという欲求が沸々と湧き上がってきた。そしてその想いを全て歓声とコールに変換した。それが彼にとって一番の気付け薬だと知っていたから。
全23曲分の感想を書いているとそれこそハンムラビ法典を超えるボリュームになってしまうので書かないけど、新曲から過去のソロ曲まで大盤振る舞いのケンティー初学者から師範級まで楽しめるスペシャルセットリストだったし、何を言ってるのか分からねーと思うが途中で空を飛んだりしていた。
一つ書き残しておくとしたらオーラスのキタニタツヤサプライズ出演によるファタールは興奮しすぎて気絶寸前だった。Apple Watchを装着していたら心拍数の異変から健康危機を察知する機能によって有明に救急車が自動到着していたかもしれないから着けてなくて良かった。健人くんって1人でいても完璧で十二分に魅力的なんだけど、完璧だからこそ想定されていないスイッチを他者が押すとそこから思いもよらない綻びが生まれて本人もファンも知らない魅力に出会えたりするので、キタニ氏におかれましては今後も末長くよろしくお願いしジェム♡
終盤の挨拶はどの回もそれぞれの良さがあったけど、個人的に2日目の夜公演の挨拶が一番印象に残っていて、それはこんな内容だった。
「ライブって生きるってことだから!今おれみんなと生きてるから!みんなとおれと一緒に生きられるのか!?ここで死ぬんじゃねーぞ!死ぬ時はおれと一緒だからな!死なば諸共!死ぬまで離さないから!」
健人くんの愛が超重量級に重いのは既知の事実であったけど、まさか我々と死ぬまで一緒にいようとしているとは思ってもみなかった。私はオタクなので健人くんのことを彼がこちらに見せてくれる範囲の中ですごくよく知っているが、一方の健人くんは私の顔も名前も一生知ることはないし、視界に入ることもない。入ったとしてもペンライトの刹那的な揺らぎの一部である。"アイドルとファン"という関係性である私たちは、恋人とか親友とか仲間とか、そういう世間で良しとされる名前の関係性になることはまずない。辞書で定義されない不確実な関係性の中で「死ぬまで」一緒にいようとしてくれる愛情と覚悟に胸が燃える思いになった。これまで「永遠」という言葉は多用していたように思うけど、死ぬまでとこんなにハッキリ口にしたのは初めてだったんじゃないかな。でもね、ケンティー。多分ケンティーは死ぬまでどころか死んでもアイドルだよ。死せどもアイドル、中島健人。
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2018年に初めてケンティーのソロコンに行った帰り道、「もし愛が物質だったらTDCホールが健人くんからの溢れんばかりの愛で埋め尽くされてファンが窒息するから、神様は愛を目に見えないものにしたんだ」とシラフで大真面目に考えたものだけど、7年経った今もこの考えを覆すつもりは毛頭ないどころかより強固になった。そんなソロ活動一発目、アイドル史に残る途轍もないコンサートでした、N/bias。
死なば諸共!地獄の果てまでLOVE KENTY!!!